というわけで、小林一三についていろいろご紹介してきました。
今回で終わりでございます。
前回、統制経済派と敵対して商工大臣を辞職しました。
そうすると、今度襲ってくるのは、小林が経営していた事業に対しての統制です。
阪急電車も、東京電燈などの会社は国有化され、宝塚歌劇団も本来の公演を行えない状態になっていました。
唯一、残ったのが、戦意高揚としての、「東宝」の映画でした。
まあ、つまり、小林としてはやることがなかった、ということです。
お茶などを楽しんでいたらしいですが、それも批判されたりと、いろいろ面倒だったようです。
そして、戦争が終わります。
すると、さっそく、戦後復興院総裁という役職に就きます。
当時は、占領下で、闇市が横行している状況になりました。
それに対して、
「自由経済の復活をもって、貧乏な日本を立て直していこう」
という考えで、仕事に励みます。
ちなみに、あまりにも日本が悲惨な状態だったことに、小林は驚愕したそうです。
まあ、そりゃそうですよね。新聞とかでもうそばっかり書かれていて、正しい情報が得られなかったわけですから、仕方ありません。
ちなみに、
統制経済=国家の官僚が自分のやりたいように国を動かせる仕組み
なんです。逆に
自由経済=国民が国を動かすシステム
ということです。
なので、官僚としてはそのまま統制経済でうまみを独占しておきたい、となるわけです。
だから、思うように仕事ははかどらないし、誰に
「一刻も早い自由経済の導入による健全な日本の復活」
を訴えても、誰も聞いてくれないわけです。
そして、まさかのGHQによる公職追放リストに入れられて、またやめさせられることになります。
つまり、国の仕事では、全くの役立たず?というわけでした。
役立たずという言い方は語弊がありますが、自分の思うような仕事は全然できなかった、ということです。
本人もやめたがっていたそうです。
そして、再び隠居生活に戻り、
東宝vs東宝労働組合(裏には共産党)の戦いや、後輩育成をしながら、晩年を迎えます。
ということで、この本は終わります。小林一三の人生が分かる、いい本でした。
500ページもあったのでだいぶ時間かかりましたが、それだけ濃い人生だったのでしょう。
読み終えて思うのは、現代に小林一三が残したものがありふれているな、ということです。
阪急百貨店とターミナル駅の関係とか、いわゆるニュータウン構想とか、小林一三の考え方をパクった、という感じがしてしまいます。
細かいところはいろいろと違うのでしょうが、、、
人口が増えていく時代に、小林の事業は人々の幸せに大きく貢献したのでしょう。
金儲けのためでもあるんですが、
「中産階級の生活向上」
を常に掲げて事業をしていたので、庶民と小林一三の関係はWin-Winといえるのではないでしょうか。
僕らも幸せになるし、小林自身も幸せになる。
こういう関係が生まれるのが、自由主義のいいところだし、それを実践して見せた小林一三は、やっぱりすごい人だったのだと思います。
なんか写真イケメンだし…イケメンって言うか、男前というか…
まあ、いいや、
ですが、今の人口減少時代に、小林が言ったような、郊外にマイホームを作って通う、というシステムはおそらく成り立たないでしょう。
その辺は、現代の生活に合わせて変えていく必要があると思います。
ですが、「中産階級の生活向上を通して、健全な精神をはぐくむ」をモットーにいろいろと事業を行い、この初心を忘れなかったことが、小林の成功の大きなポイントだと思います。
今でいう、「ビジョナリーカンパニー」とかいうやつですね。
そういう意味でも、先見の明があったのでしょう。
そんな感じの、すごい人でした。勉強になりました。ありがとう小林一三!
終わり
アディオス
次は池上彰の
「日本の戦後を知るための12人」
を紹介していきたいと思います。
小林一三 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター (単行本) [ 鹿島茂 ] 価格:2,200円 |