「トルコは東洋なのか?西洋なのか?」。
そんな疑問から始まるこの本、新井政美さんの『イスラムと近代化』をもとに、トルコが歩んできたユニークな歴史をひも解きます。
オスマン帝国の崩壊からトルコ共和国の成立、そして現代に至るまで、イスラムと世俗化(宗教を排除した価値観)のせめぎ合いがどのように展開されてきたのか。
その背景には、単なる宗教論争では片付けられない深いドラマがあります。
ちょっとお堅そうなテーマに思えるかもしれませんが、歴史や宗教に興味があるなら必見の内容です!
書籍の基本情報
ざっくりあらすじ
この本では、トルコがイスラム教的伝統と「近代化(世俗化)」の間でどう揺れ動いてきたのかを、オスマン帝国末期~現代までの歴史を通じて解説しています。
トルコ共和国の建国者・ケマル・アタテュルクが推し進めた大胆な改革、そこから続くポスト・ケマル時代のイスラム復活、そして現在のトルコが抱える課題。
本書のキーワードは「イスラム」「近代化」「東洋 vs 西洋」。
トルコが東洋と西洋の狭間で模索してきた歴史がたっぷり詰まっています。
ここが面白い!この本の見どころ
1. オスマン帝国末期:近代化の第一歩
オスマン帝国は、圧倒的な強さを持つヨーロッパ列強の影響を受け、西洋の制度や文化を取り入れようとしていました。
たとえば「タンズィマート改革」では、フランスの法律を参考にした新しい法制度を導入するなど、当時としては画期的な挑戦が行われました。
教育制度も改革しました。最終的には、この改革を主導したスルタンは、この教育制度によって育ったケマルのような軍人に排除されていくのですが…
2. ケマル・アタテュルクの改革:世俗化の全盛期
トルコ共和国の建国者であるケマル・アタテュルクは、「宗教を政治から切り離す!」という信念のもと、文字改革やカリフ制の廃止といった思い切った政策を実行しました。
これでイスラム的価値観は一時的に後退しますが、急進的すぎて民衆の反発を招く一面も。
「改革はしたけど、そこに人々の心はついていけたのか?」という問いが、この時代の大きなテーマです。
3. ポスト・ケマル時代:イスラム復活の足音
ケマルの死後、トルコは戦後の混乱や経済問題を抱えながらも、徐々にイスラム的な価値観が復活していきます。
第二次世界大戦後には、高度インフレや社会不安を背景に、イスラム教的慣習が求められます。過去数百年もその伝統で生活してきたのですから、当然です。
特に1950年代以降、経済の発展とともにイスラム派が政治的にも力をつけ始めます。
4. 現代トルコの課題:東洋と西洋の間で
「トルコは東洋か西洋か?」という問いは今でも続いています。特にエルドアン政権下ではイスラム回帰の傾向が強まり、国内外で物議を醸している状況。この本では、こうした現代のトルコを理解するための背景知識がしっかり描かれているので、ニュースを読み解くうえでも役立つはず!
読んでみた感想
ここが良かった!
- 歴史と宗教、政治が絡み合う複雑なテーマを、著者が丁寧にひも解いてくれます。難しそうに見えるけど、意外と読みやすい!
- ケマル・アタテュルク時代の急進的な改革と、その後のイスラム復活を比較しながら描いているので、「トルコってこんな国だったんだ!」という発見がいっぱい。
こんな人におすすめ!
- トルコの歴史やイスラム教に興味がある人
- 宗教と政治の関係に興味を持っている人
- ニュースでトルコや中東の話題を見ると「もっと知りたい!」と思う人
まとめ
『イスラムと近代化』は、トルコという国が歩んできた歴史とその中での宗教や政治の動きについて、いろいろ知ることができました。
「東洋と西洋の狭間に立つ国」というフレーズがこれほどしっくりくる国はありません。歴史や宗教に興味がある方なら、一度手に取る価値ありです!