とりのすけ_てきとう人間が頑張って生きてます

派遣社員とりのすけの「てきとうに生きてる記録」。書評・副業・どうでもいい話など、てきとーに続けられる話をまとめてます。

日本国不安の研究 感想|猪瀬直樹が語る社会保障費の真実

『日本国不安の研究』は、猪瀬直樹氏が日本の社会保障費をめぐる根本的な課題に切り込んだ一冊です。
医療・介護・薬という三大分野を対象に、制度運用の歪みが現場をしばり、国民負担を増大させている現実を明らかにします。
この本の良いところは、単なる批判ではないところです。
「制度さえ変われば、もっと良くできる」
という視点を与えてくれる点に大きな価値があります。

 

 

 

この記事の要約

  • 著者・猪瀬直樹の行政経験と問題意識
  • 社会保障費はGDPの1割に膨張

  • 医療・介護・薬の制度的非効率が国民負担を増大

  • 現役世代サラリーマンに重い影響

  • 制度改革が改善の鍵を握る

 

著者・猪瀬直樹と本書の背景

猪瀬直樹氏は、作家としてだけでなく東京都副知事・知事を歴任した人物です。
既得権益に斬り込む姿勢で知られ、これまで道路公団民営化などの改革を成し遂げてきました。
本書では、その経験をもとに「医療・介護・薬」という国民生活に大きくかかわる分野に焦点を当て、制度の非効率とその弊害を浮き彫りにしています。

 

社会保障費と国民負担の現実

現在日本の社会保障費は、すでにGDPの1割に達する規模に膨らみ、特に現役世代のサラリーマンに重い負担を強いています。この規模は、日本の誇る自動車産業に匹敵するとか。
保険料や税金が増える一方で、給料は伸び悩み、物価は上がり、家計を直撃しています。

社会保険料のメインである医療や介護の現場では制度設計のゆがみが効率化を妨げ、無駄な支出が積み上がっているのが実情です。

ここからは、この本で描かれた制度設計のゆがみについて見ていきましょう。

 

病院の分業と精神医療のタブー

日本の病院は本来「分業」によって効率化できるはずです。
一部の病院は高度医療に特化、他の病院は精神医療に特化する、などです。
ただ、実際には非効率な運営が続いています。
病院の収入減は診療報酬です。これは国が設計しています。
診療報酬制度は病院の経営を左右し、この制度設計の範囲内で病院は利益を上げようとするインセンティブが働きます。
その結果、無駄な検査を行ったり電子カルテが整わなかったりなど、無駄なコストが発生しています。

深刻なのが精神医療

日本は世界でも突出して精神病床が多いです。
長期入院患者が退院のめどが立たない「出口のない構造」として固定化されています。これは医師や患者の問題ではなく、制度設計そのものが病院経営にとって長期入院を有利にしているためです。
入院させておいた方がもうかる仕組みになっているのです!
このように、診療報酬制度が患者の行方を左右しているのです。
本書は「制度を変えれば改善は可能」という視点を提示し、医療の未来を考える上で重要な示唆を与えています。

 

制度改革がもたらす効率化の可能性

もし診療報酬や病床政策を見直せば、数千億円規模の医療費削減が可能です。
精神病の患者だって、退院して社会生活を送りやすくなります。
まだ、退院後の受け入れ側がうまく機能していませんが、民間の力を借りたらうまくいく道があります。
1つ1つ見ていけば、現場はもっと良くできるのです。

介護の矛盾と社会保障費の重圧


次に、介護についてみていきます。
介護は少子高齢化の中で社会保障費の最大の増加要因となっています。
想定よりもはやい速度で負担が増加しています。
官僚主導の制度運用では柔軟な運用が難しく、利用者や現場に寄り添う視点が欠けています。
その結果、サラリーマンを含む現役世代は高額な保険料を負担しながらも、自分たちの将来に希望を持てないという状況に陥っています。

介護保険制度の問題点

介護保険制度は当初、利用者が安心して介護サービスを受けられる仕組みとして導入されました。
しかしし、給付と負担のバランスが崩れ、負担が月額1万円に近い地域もあります。
制度疲労が進み、理念と現実が乖離しているのが実態です。

制度運用が招いた無駄な使い方

私もあまり詳しくありませんが、本書では驚きの事実が明らかにされました。
介護保険ののサービスの中で、特によく使われているのが「家事の代行」のようなものだったのです。
重介護者の場合、もちろん家事の代行もOKです。
しかし、軽度の場合、それは9割を保険料で賄うべきものなのかは疑問が残ります。
さらに、せっかくのリハビリの機会を取り払ってしまうという問題もあります。
しかし、介護サービス提供者側としては
「家事代行をしたら儲かる」
というインセンティブが働くのです。これがまさに制度の弊害です。

制度の間を工夫すればうまくいく

一方で、現場には制度の隙間を工夫して成果を出している事例もあります。
地域の住民の力を使った制度やサービス付き高齢者向け住宅など、民間の力も活用したアイデアを見出せば、介護保険負担をそれほど上げずに、より良い住民サービスを提供できるのです。

www.satsuki-jutaku.mlit.go.jp


本書はこうした「制度さえ変わればもっとできる」という現場の声を拾い上げ、未来への希望を提示しています。

 

薬と製薬産業の構造

医療に加えて、薬剤の分野でも問題はあります。
薬の分野は本来「医薬分業」によって透明性と効率性を高めることが期待されていました。
しかし現実には、制度運用の歪みが過剰投薬や薬局乱立を招き、医療費の肥大化を助長しています。
薬価基準や診療報酬の仕組みが「薬を出すほど収益になる」というインセンティブを作り出しており、現場の医師や薬剤師の意図を超えて無駄な処方が繰り返される構造です。

医薬分業の理念と実際の制度運用のズレ

医薬分業はもともと「医師は診断と処方、薬剤師は調剤」という役割分担によって医療の質を高めることを目的として導入されました。
というのも、一昔前は医師が薬を管理しており、ぼったくり価格で提供することが横行していたのです。
それを改善するために医薬分業が進められたものの、制度が十分に機能せず、謎の技術料がとられるなど、効率化や透明化に結びつかず、患者や財源への負担が増しています。

 

 

制度改革で可能な薬費削減と透明化

制度を見直せば、私たちが負担する薬代も大幅に削減できます。
例えば薬価基準の改定や処方・調剤の情報連携を進めれば、必要のない技術料を支払う必要はありません。

 

政策と未来への展望

youtu.be

『日本国不安の研究』の議論は、単なる制度批判にとどまらず、これからの日本社会がどうあるべきかを考える上での展望を示しています。
この点が、「実務家猪瀬直樹の本領発揮」であるように思います。

特に注目されるのは、現状の仕組みに風穴を開けようとする改革勢力との接点です。
医療・介護・薬の非効率を放置すれば国民負担は膨らむ一方ですが、制度を変えれば負担軽減と効率化の両立が可能になります。

ここからは「誰が改革を阻んでいるのか」にも踏み込み、猪瀬氏が所属している「日本維新の会」の政策と関連付けながらまとめていきます。

日本維新の会の政策との接点

維新の会は社会保険料の負担軽減を公約として掲げています。
本書で指摘されている問題点と重なる部分も多く、医療や介護に関する仕組みを変えて、現役世代の負担軽減につなげるようとしています。
OTC類似薬の改革や病床数の削減など、具体的な内容にも踏み込んでいます。

o-ishin.jp


こうした政策との接点を意識することで、現実的な改革の可能性を具体的に考えられるようになります。


改革を阻むのは誰か

医療・介護・薬の制度改革を阻んでいるのは、簡単に言ってしまえば、既得権益に守られた団体です。
小さな団体の論理が優先され、国民の生活改善や効率化は二の次にされてきました。
これらを突破していかないと、改革は実現しないのです。

道路公団民営化の実績に期待

猪瀬直樹氏は過去に道路公団民営化を成し遂げた実績を持ちます。
その経験からも、強固に見える既得権益の壁を突破することは不可能ではないと語ります。
制度は人が作り、人が運用するものです。
数字を積み重ねて説得していく」という方針で、未来に向けた改革の可能性を読者に示唆しています。

 

読者としての感想と気づき

本書を読んで強く感じたのは、「自分の給料が伸びない理由の一端がここにある」というリアルな実感でした。
ニュースやネットメディアで「社会保障費の膨張」という言葉は目にしても、正直どこか遠い話に思えていました。
しかし、医療・介護・薬という巨大産業の仕組みが制度によって非効率に固定され、その負担が現役世代の社会保険料や税金に直結している
――それを具体的な数字と事例で突きつけられると、自分の生活とつながる問題であることが一気に腑に落ちます。
そして何より、「なんて無駄なことをしているんだ」と感じました。

さまざまなメディアで維新の会が「社会保険料の負担軽減」を推進しているのは、やはり現役世代として切実だからです。
本書を読むと、その政策の背景にある「制度の歪み」という大問題を、もっと深く理解できました。
そしておそらく、他にも制度のゆがみは眠っているのだと思わずにはいられません。

既得権益の分厚い壁を実感

読んでいて衝撃だったのは、現場の医師や介護士が悪いのではなく、制度が固定していることです。
制度が「出口のない入院」や「薬を出すほど儲かる仕組み」を作り出し、それが社会保障費を膨張させている。
つまり、国民の負担を増やしているのは、制度そのものだったのです。
そしてこの制度は、制度によって儲かる「既得権益」が徹底抗戦で守ります。
この「壁の厚さ」を知ると同時に、逆に「制度を変えれば改善できる」という現実的な希望も感じられました。

当たり前の問題を当たり前に指摘する価値

多くの人が薄々気づいていながら言いにくいことを、猪瀬氏は冷静に数字で示しています。
「なんでこんなに保険料が高いのか」「なぜ介護現場が改善しないのか」
といった素朴な疑問に、制度の仕組みという答えを与えてくれる。
その率直さが読者にとってとても明快で、日常の疑問が構造的な問題とつながる瞬間に、目が開かれる思いがしました。

冷静に数字を積み上げていくと、事実が見える

印象的だったのは、感情的に不安を煽るのではなく
「数字を積み上げていく」ことで事実を可視化する手法です。
精神病床の患者数、介護費用の推移、薬価基準の仕組み――
これらを丁寧に整理すると、バラバラだった断片が一つの絵として見えてきます。そして、その絵は「努力不足ではなく制度設計の問題」という結論を浮かび上がらせます。
読み終えたとき、単なる批判本ではなく「制度さえ変えればもっと良くなる」という希望を感じることができました。

自分ごととして考えたときのリアルな不安と希望

正直に言えば、読了後は「このままでは自分たちの世代が損をする」という不安も強く残りました。
給料は上がらず、負担だけが増える構造は、このままでは破綻するしかない。
しかし同時に、本書が提示する「制度改革」という道筋は、現役世代が声を上げれば現実になる可能性があるとも思えました。
私は維新の会シンパではありませんが、この本は彼らの主張を理解する手助けになります。
読者として、単なる批判や不安を超えて「自分ごと」として考えられるきっかけになった一冊でした。