
猪瀬直樹氏の『日本国の研究・続』を読み返すと、バブル崩壊後の日本が抱えていた構造的問題が鮮明に浮かび上がってくる。
この本で指摘された問題の多くは、20年以上経った現在でも根本的な解決に至っていないように思えるのは、私だけだろうか。
税制の闇と国民の無関心
源泉徴収制度の罠
これは「日本国の研究」続刊である。
前作では道路公団などの闇について書かれていた。
今作で猪瀬氏が最も強く批判するのが源泉徴収制度だ。
昭和15年に始まったこの制度により、サラリーマンは給料から税金や社会保険料が天引きされているため、自分で税金を支払っている実感が薄い。
これが納税者としての意識を希薄にし、行政への監視機能を弱めているという指摘は的確だ。
アクアライン建設費の高騰や自動車重量税の問題など、具体例を挙げながら税金の無駄遣いを告発している。
当時片道5000円だったアクアライン(現在は1600円)の高額さも、建設費増大のツケを利用者に回しているだけではないかという疑問は今でも有効だろう。
個人的感想:
そりゃ税金増えていくわと思ったし、色々なすり抜け方があることにも逆に感心せざるを得ない。
源泉徴収で「取られている感覚」が薄いというのは、確かに実感としてある。
毎月の給与明細を見ても、差し引かれた額の大きさに慣れてしまっている自分がいる。気づかないことの恐ろしさよ…
官僚制度と天下りの構造
トライアングル構造の弊害
次に、永田町・霞ヶ関・虎ノ門(特殊法人)のトライアングル構造こそが、日本の権力構造の核心だと猪瀬氏は指摘する。
特殊法人や公益法人、そしてその下にぶら下がる孫会社群が、まさに「税金を摂取するバクテリア」として機能しているという。
O157問題での給食センターの事例や、公営ギャンブルの利権構造など、具体的な問題を通じてこの構造の弊害を明らかにしている。
民間なら倒産するような失敗をしても責任の所在が曖昧で、誰も責任を取らない仕組みになっている。
個人的感想:
そんなに天下りのポスト重要かなあと思うけど、重要なんだろうなあ。
上位の天下りができるポジションの人はいいとして、ぶっちゃけ天下りができないような公務員もいると思うのだが、その人たちはどんな気持ちなのだろうか?
それともそこまでポジションを用意するために色々頑張っているのだろうか?
情報公開の重要性
メディアと政治の癒着
猪瀬氏は情報公開こそが全ての問題解決の鍵だと主張する。
国会が資料提出を命じても罰則がないため従わなくてもよく、逆に情報公開で余計な情報を出したら罰するという逆転した構造を指摘している。
地方新聞が都道府県行政と企業との癒着関係では?と疑われることや、メディアが調査報道ではなく結果報道ばかりしていることへの批判も鋭い。
個人的感想:
官と民、この区別というか、官民の間のような組織が必要なのは分かるが、確かにウマいことごまかしやすい所でもある。
猪瀬は公開が大事だというが、確かにそうなんだろうと思った。
それをこれくらいわかりやすく書いてくれる人やメディアが増えるといいのだが。
現在への示唆
ReHackの試みに見る希望
そういえばRe:Hackの政治資金報告書の会はその一端を担ったような形がして個人的には良かったわ。
選挙は金がかかるんだねえ。
このような市民による情報公開・分析の取り組みは、猪瀬氏が求めていた方向性と合致しているような気がする。
テクノロジーの発達により、一般市民でも政治資金の流れを可視化できるようになったのは大きな進歩だ。
おわりに
前の「日本国の研究」の続きで、そのすそ野を広げた感じの本だった。
色々な分野で道路公団のような問題があることを実感する。
ちょっと古い本だが、現状どうなっているのだろうと思う。
『続・日本国の研究』が出版されてから20年以上が経つが、指摘された問題の多くは形を変えながらも依然として存在しているように感じる。
省庁再編は行われたが、本質的な構造は変わっていないらしい。
むしろ問題が複雑化・巧妙化している面もある。
しかし、インターネットやSNSの普及により、市民による監視や情報共有は格段に容易になった。
Re:Hackが紹介している取り組みが示すように、テクノロジーを活用した新しい形の市民参加が、猪瀬氏が求めていた「情報公開による民主主義の健全化」を実現する可能性を秘めている。
重要なのは、この本が提起した問題意識を現代に引き継ぎ、新しい手法で解決に取り組み続けることだろう。
税制や行政の透明性向上は、一朝一夕には実現できないが、市民一人ひとりの関心と行動の積み重ねが変化をもたらすはずだ。

