とりのすけの感想ブログ|本・マンガ・映画・ドラマ

派遣社員とりのすけの「てきとうに生きてる記録」。書評・副業・どうでもいい話など、てきとーに続けられる話をまとめてます。

『魔人探偵脳噛ネウロ』― 天才が行き着く先は、しょぼい感情だった

漫画の話を一本。

「魔人探偵脳噛ネウロ」を改めて読み返した。

松井優征の、暗殺教室より前の連載作。

 

 

きっかけは正直うしろ向きで、昔ジャンプを読み始めた頃にちょうど終盤だけ目に入っていて、「何なんだこれ」とずっと引っかかっていた作品だった。

話の途中、しかもいちばんスケールがでかくなったあたりだけ見ていたので、まあ意味がわからない。

それが社会人になってから一括で読む機会があって、今回もう一度頭から通した。

あと単純に、同じ松井優征の暗殺教室が面白かったので、その流れで遡ってみたというのもある。

 

 


読み返してまず思ったのは、テンポがいいということ。

ツッコミが普通に面白いし、一話が短めでサクサク進む。

 

謎を食べる魔人、という設定そのものは、正直そこまでハマらなかったんだけど、その分ギャグ回の小ネタが効いていて飽きない。

 

ダンボールおじさんの段ボールの解説しているところとか、ああいう一見どうでもいい脇道が妙に記憶に残る。

 

で、いちばん好きなのは終盤の人間心理の描き方だった。

めちゃくちゃ頭のいいキャラが、最終的には意外としょぼい、ちっぽけな感情に寄り添って、それで大きなものがひっくり返っていく。

 

頭脳バトルの皮をかぶせながら、結局は人間のしょうもない部分を書いている、みたいなところが個人的には刺さった。

この人間心理の描写が、妙に人間臭いのがいい。

 

大層な思想とか正義とかじゃなくて、もっと地べたの感情で動いている。

敵役である葛西の「長生きしたい」みたいな、言ってしまえばそれだけのことが行動の芯になっていたりする。

 

立派じゃないけど確かに分かる感情を、ちゃんと正面から書いてくるのが好きだった。

電人HALのあたりも同じで、強さや能力の話のはずなのに、最後に残るのは人間味のほうだった。

 

ラスボスのシックスは、正直スケールがでかくなりすぎて「まあこうなるよな」くらいの感想ではあるんだけど、そこに行き着くまでの細かい感情のほうが自分には面白かった。

 

あと地味に良かったのが、恋愛要素が一切ないこと。

弥子という女の子が主役の片方にいるのに、そこを恋愛に振らない。

普通あれだけ近い距離で組んでたら一回くらい匂わせそうなものなのに、本当に最後まで「ないんだ!」という感じで、そこは逆に笑った。

 

まあ、魔人だしね。

 

使えるはずのカードを一枚も切らない潔さがある。

派手な頭脳バトルとして読んでも、人間のしょうもなさを書いた話として読んでも、どっちでもいける。

 

個人的に言うと、最後のあとがきが結構好き。

漫画かとしての信念が見える

 

たとえ打ち切りになったとしても、責任ある終わり方をする。

つまり、投げ出さず、どんな形になっても作品としてきれいに終わらせる。

 

結構すごいな、と思った。なかなか実はそれが難しいことだと思う。

週刊連載はアンケート大変だし、打ち切りも、思っていたよりも長く続くこともあるけれど、

どんな時でも、ちゃんと終わらせる。

 

それは、作品に対して、というのか、読者に対して、というのが正しいのか分からないが、強い覚悟を感じた。

 

これを読んで、すこしファンになった。

逃げ上手の若君も、途中まで買ったけど見てないや…