「社会学をはじめる――複雑さを生きる技法」
宮内泰介氏の著書であり、社会学の基本的な考え方や分析手法をわかりやすく解説してくれています。
「社会学とはなんぞや?」と思った理系出身のわたくし。
複雑な社会に対して、対話を通じて何らかの形で理解をしていく方法のおおまかな概要が学べました。
今回は、そんな「社会学をはじめる」の概要とあらすじ、主要テーマと見どころ、そして私の感想と評価を紹介します。
書籍の基本情報
- 著者名:宮内泰介
- 出版年:2024年
- ジャンル:社会学
- ページ数:208ページ
あらすじ
本書は、社会学の基本的な考え方や分析手法を通じて、複雑な社会をなんとかして理解する方法を紹介しています。
基本的な考え方は、人との対話やデータとの対話を通じてその場に存在するの意味を探り、そこで得られた意味を分類したり比較したりして分析をし、新しい問いを立てていく、というものです。
筆者自身の過去の研究事例など、具体的な内容も含めて紹介しながら、社会学の視点からのものの見方を、分かりやすく伝えていく本です。
1冊読めば「社会学っていったいどういうものなのか」がふんわりと分かるようになるでしょう。
主要テーマと見どころ
社会は複雑である複雑さと意味の探求
社会はそもそもいろいろな構造が複雑に絡み合っています。
さらに、1つの構造の中でもいろいろな視点から見ることができます。
こうして、非常に複雑に構成されているのが「社会」です。
しかし、その中で
「社会の中にある意味を見出すことが重要だとして、何らかのアプローチをしよう」
というのが社会学です。
複雑さを単純化するのではなく、そのままの形で理解することで、解決できる問題もある、ということもあります。
対話の重要性
社会学は対話から始まり、対話を通じて社会を理解するする手法を学びます。
対話を重ねることで、個々の意味が見出され、社会全体の理解が深まります。
もちろん人との対話だけでなく、書物や論文、データなんかと対話することもあります。
つまり対話とは「意味を見出す」ということに他なりません。
具体的な分析手法
このような社会を分析するうえで、大事になってくる基本的な考え方が以下の4つです
- 分類・類型化
- 傾向を見る
- 比較
- 関係を探る
これらは、普通に人がよくやる分析方法です。
社会学は、世の中で起きていることを、普通に分析することなのです。
なんだか適当な気がしますが、その緩さがあるからこそ、解決できる問題があるのも事実です。
感想と評価
理系出身の人間からすると、
理論の正しさ < 新しい理論や概念の提示して議論を呼ぶ
ことにポイントが置かれる、という視点は面白かったです。
分析とか論文って、正しさが大事だと思っていました。
しかし、そうではないこともあるんだ、と思いました。
もちろん、全然正しくないことを言っているわけではありませんが、正しさの厳密性がおそらく全然違うのだと思います。
さらに面白いのが、だからこそ解決できることがある、ということです。
複雑すぎる社会で、正しさを優先した結果、かなり単純化して
「だからこうだ」ということにあまり意味はないことがあります。
「理論としてはあやふやかもしれないけれどみんなが納得できる」
みたいなことの方がリアルな社会では価値がある、これは確かにそうだな、と思いました。
いろいろ新しい知見を獲得できてよかったです笑
まとめとおすすめポイント
「社会学をはじめる」は、社会学に興味がある人で、前々社会学を知らない人におすすめです。
特に、私のような理系人間は、一度読んでおくと、考え方の幅が広がって良いなあ、と思います。
宮内泰介氏の著書を通じて、ぜひ社会学の魅力を感じてみてください。