人が生きていく上では愛は欠かせない
この本を読んだらそんなことを思いました。
ボストン大学の精神科医、ベッセル・ヴァン・デア・コークが30年間治療、研究してきた、トラウマ、PTSDの集大成がまとまった本です。
児童期の虐待や、兵士の戦争での記憶といった、強烈かつ、生命の危機を感じさせるような状態がフラッシュバックして、どうして人はトラウマで苦しむのか、ということについて書かれています。
合わせて、そのトラウマに対処する治療方法についても、かなり詳しく書かれている本です。
読むのは大変でした、600ページもあります。図書館で借りたので、2週間そこらで読まなくちゃいけないプレッシャーも感じながら、頑張って読みました。
長えなあ、と思いましたが、長い時間をかけて読んだ分のもとはとったかな、と思える内容でした。
この本では、
- トラウマの記憶される方法
- フラッシュバックする原因
- その対処法
に大きく分かれます。
記憶方法で科学的に説明してくれているので、フラッシュバックする原因なんかも、
「ああ、なるほど、そりゃそうなるね」
と分かりやすいと思いました。
基本的には、トラウマ記憶は、脳みその心臓を動かしているような、生存に関わる部位に蓄積されます。
通常の記憶は高度な思考をする部位に蓄積され、忘れていくものなのですが、そうではない部位に蓄積されるので、忘れられません。
そして、高度な情報処理ができないので、まばらな記憶として残るので、人に語ろうとしても、支離滅裂になってしまいます。
こんな感じで、忘れにくく、整理されていない記憶なのに、非常に色濃く残ります。
整理されていないので、フラッシュバックしたときに、何が原因でフラッシュバックしたのかが分かりません。そもそも、トラウマ記憶を忘れていることだって場合によってはあります。
人の生存戦略として、忘れたほうが生き残れる、と判断されるほど、危険な状態の記憶、ということです。
それに対して、
セラピーやヨガ、眼球運動、ニューロフィードバック、演劇などを通じて、
「トラウマを治していこうぜ」
「薬とかじゃなくて、こういう原始的な方法がより効果的だぜ」
という形で、対処法を説明します。
この治療を通じて、最も大事なのは、
- 自分を制御できること
- 他人を信頼できること
ができれば、トラウマに対処できる、というまとめ方をします。
自分の体の感覚を感じて、それをまず受け入れる。
そして、他人は怖い存在じゃないんだ、信頼できる、お互いに愛を感じさせる存在なんだ。
ここがすごく大事なポイントだと思います。愛を感じられるようになることで、人はトラウマを治せるのです。なかなか新しい視点だなと思いました。
これらに気づけて初めて、トラウマと向き合うことができます。
トラウマと真摯に向き合い、整理されていなかった記憶を整理することでのみ、トラウマを克服できる、と考えているようです。
この本でトラウマの対処法について勉強しました。
ひどいトラウマとはいかなくとも、私たちの生活の中で、苦しい場面は当たり前に存在します。
それに対して悩んだりして、人はいろいろ苦しみます。
それに対する対処法のヒントが、この本にはいっぱいありました。
一番は、お互いを信頼して愛すること。
これによって、人はすごく幸せに生きていけるな、というのを、科学的に示してくれています。こんな簡単なことで世界がうまくいくのなら、使わない手はないなと思いました。
ということで、次回からは、もう少し細かい説明をしていきたいと思います。
おわり
アディオス
身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法 [ ベッセル・ヴァン・デア・コーク ] 価格:4,180円 |